― SATA電源ライン分離でDisk警告が消えた事例 ―
自作PCを使っている中で、以前から気になっていた現象がありました。
それは、たまにGドライブが見えなくなるというものです。
常に発生するわけではありません。
再起動すると戻ることもあります。
普段は普通に使えているため、原因を特定しにくい不具合でした。
このような「たまに起きる不具合」は厄介です。
発生した瞬間を見逃すと、あとから原因を追うことが難しくなります。
そこで今回は、自作した PC Health Monitor を使って、CPU・メモリ・ディスク使用率、SMART情報、Windowsイベントログを記録しながら、原因を追ってみました。
1. 最初の症状
今回の症状は、次のようなものでした。
・Gドライブがたまに見えなくなる
・再起動すると復帰することがある
・常時発生ではない
・SMART上では明確な異常が見えにくい
この時点では、単純にHDD本体の故障なのか、ケーブルなのか、電源なのか、Windows側の問題なのか判断できませんでした。
感覚だけで判断すると、
「HDDが古いから壊れかけているのでは?」
と考えたくなります。
しかし、不具合解析では、いきなり結論を決めつけるのは危険です。
まずは、実際に何が起きているのかを記録する必要があります。
2. PC Health Monitorでイベントログを取得
PC Health Monitor v0.4では、WindowsのSystemイベントログを取得するようにしました。
すると、次のような警告が記録されていました。
disk 51
ページング操作中にデバイス上でエラーが検出されました。
disk 157
ディスクが突然取り外されました。
storahci 129
デバイスにリセットが発行されました。
これは重要な情報です。
特に、
disk 157:ディスクが突然取り外されました
storahci 129:SATA/AHCIコントローラにリセットが発行された
という組み合わせから、単純なファイルアクセスエラーではなく、SATA接続や電源まわりで一時的な不安定状態が起きた可能性が見えてきました。
3. PC内のドライブ構成を確認
次に、PC内のドライブ構成を確認しました。
構成は以下の通りです。
Cドライブ:NVMe SSD
Eドライブ:SATA HDD 8TB
Gドライブ:SATA HDD 3TB
CドライブはNVMe SSDです。
EドライブとGドライブは、マザーボードにSATA接続されたHDDです。
Windowsのディスク番号を確認すると、
Disk 0 = Eドライブ SATA HDD 8TB
Disk 1 = Gドライブ SATA HDD 3TB
Disk 2 = Cドライブ NVMe SSD
という構成でした。
そして、イベントログには、
ディスク 0 が突然取り外されました
ディスク 1 が突然取り外されました
という記録がありました。
つまり、イベントログ上では、EドライブとGドライブの両方が一時的に取り外されたように見えていたことになります。
4. Gドライブは古いWD Green HDDだった
現物を確認すると、Gドライブは以下のHDDでした。
WD Green 3TB
WD30EZRX
製造年:2012年
このPCの中では、このGドライブが唯一古いHDDでした。
WD Green系は省電力寄りのHDDであり、古い個体では省電力状態からの復帰時に応答が遅れる可能性があります。
もちろん、これだけでHDD故障と断定はできません。
ただし、今回のような「たまに見えなくなる」という現象とは関連しそうです。
5. さらに分かったこと:E/Gドライブは同じ電源ラインだった
SATA信号ケーブルは、EドライブとGドライブで別々でした。
しかし、確認すると、SATA電源ケーブルは同じラインでした。
つまり、以下のような状態です。
対策前:
電源ユニット
└─ SATA電源ライン
├─ Eドライブ HDD
└─ Gドライブ HDD
この構成では、一方のHDDが復帰時やアクセス時に電流変動を起こした場合、同じ電源ライン上のもう一方にも影響する可能性があります。
特にHDDはモーターを持つ機器です。
SSDよりも電源変動の影響を受けやすいと考えられます。
6. 仮説
ここまでの情報を整理すると、次の仮説が立てられます。
Gドライブが省電力状態から復帰する
↓
古いHDDのため応答が遅れる、または電流変動が起きる
↓
同じ電源ライン上のEドライブにも影響する
↓
WindowsがSATA/AHCI側でリセットを発行する
↓
disk 51 / disk 157 / storahci 129 が記録される
↓
結果として、GドライブやEドライブが一時的に見えなくなる
この仮説では、HDD本体の完全故障ではなく、
古いHDDの挙動・省電力復帰・同一電源ラインによる巻き込みを疑っています。
7. 実施した対策
対策として、EドライブとGドライブのSATA電源ラインを分けました。
対策前:
Eドライブ HDD
Gドライブ HDD
→ 同じSATA電源ライン
対策後:
Eドライブ HDD
→ 単独のSATA電源ライン
Gドライブ HDD
→ 単独のSATA電源ライン
あわせて、SATA信号ケーブルとSATA電源コネクタの抜き差し確認も行いました。
接触不良の可能性もあるため、まずは基本的な確認から行います。
8. 対策後の結果
対策後、PC Health Monitorでログを取りました。
その結果、Disk系イベントは以下の状態でした。
DiskEvent_Count = 0
WHEA_Count = 0
DisplayEvent_Count = 0
Event_Error_Count = 0
Event_Critical = 0
以前出ていた、
disk 51
disk 157
storahci 129
といったストレージ系の警告は、対策後のログ範囲では発生していませんでした。
これは、EドライブとGドライブの電源ライン分離が有効だった可能性が高いことを示しています。
もちろん、1回の確認だけで完全に断定はできません。
しかし、現象・ログ・構成・対策後の結果がつながっているため、かなり有力な対策だったと考えられます。
9. 今回分かったこと
今回の事例で分かったことは、次の通りです。
・たまに起きる不具合は、ログを取らないと原因に近づけない
・SMARTが正常でも、接続系や電源系の問題は起きる
・Disk 51 / Disk 157 / storahci 129 は重要な手掛かりになる
・SATA HDDは電源ラインの影響を受ける可能性がある
・古いHDDは省電力復帰時の応答遅延にも注意が必要
・HDD本体故障と決めつける前に、ケーブル・電源・接続を確認すべき
特に重要なのは、SMARTが正常でも安心しきれないという点です。
SMARTはHDDやSSD本体の状態を見るには有効ですが、
SATA電源ライン、信号ケーブル、コネクタ接触、コントローラリセットのような問題までは、必ずしも直接示してくれません。
そのため、Windowsイベントログと組み合わせて見ることが重要です。
10. 不具合解析としての見方
今回の流れは、まさに品質解析と同じです。
現象:
Gドライブがたまに見えなくなる
現物:
Gドライブは古いWD Green HDD
E/GドライブはSATA接続
E/Gドライブは同じ電源ラインだった
現実:
Windowsイベントログに disk 51 / disk 157 / storahci 129 が記録されていた
対策:
E/Gドライブの電源ラインを分離
結果:
対策後、Disk系イベントは0件
これは、感覚ではなく、データと現物確認で原因に近づいた事例です。
不具合解析では、
「たぶんこれだろう」ではなく、
現象・現物・ログ・対策結果をつなげて考えることが大切です。
11. まとめ
今回、PC Health Monitorを作っていなければ、
この不具合は「たまにGドライブが見えなくなる」という曖昧な現象のままだったと思います。
しかし、イベントログを記録することで、
disk 51
disk 157
storahci 129
という具体的な手掛かりが得られました。
そこから、
古いGドライブ
SATA接続
省電力復帰
同一電源ライン
SATA/AHCIリセット
という要因をつなげて考えることができました。
最終的に、EドライブとGドライブの電源ラインを分離したところ、対策後のログではDisk系イベントは発生していません。
今回の事例は、PCトラブルにおいても、
データを取り、現物を確認し、仮説を立て、対策後の結果を見ることが重要であることを示す良い例になりました。
PC Health Monitorは、まだプロトタイプ段階です。
しかし、今回のように、見えにくい不具合の手掛かりを掴むには十分役立つことが分かりました。
今後は、過去のイベントと新規発生イベントを分けて判定できるようにし、さらに実用的なPC健康診断ソフトに育てていきたいと思います。
