判断の閾値
ものづくりに携わっていると、日々さまざまな判断を求められます。
傷、汚れ、色むらなどの外観品質。
寸法のばらつき。
特性値の変化。
市場で発生した不具合。
それらに対して、「合格か、不合格か」「出荷してよいのか、止めるべきか」という判断を下さなければなりません。
しかし、品質の判断には明確な正解が存在しないことも少なくありません。
例えば、外観品質です。
傷や汚れ、色むらなどは、一見似ているように見えても、一つひとつ状態が異なります。
100件の事例があれば、100通りの判断が必要になることもあります。
そのため、過去事例や通常生産品との差異、発生状況など、さまざまな情報を基に総合的な判断を行います。
一方で、機能不良は比較的判断が明確です。
仕様を満たさない製品であれば、出荷を止め、対策品へ切り替えることが基本になります。
もちろん、その影響範囲や市場への流出状況を確認しながら、迅速な対応を行う必要があります。
しかし、本当に重要なのは、その先です。
品質問題が大きなリスクを伴う場合、現場だけで判断を完結させてはいけません。
品質保証、生産、設計だけでなく、必要に応じて経営層まで情報を共有し、会社として判断することが重要です。
なぜなら、品質問題は現場だけの問題ではなく、会社全体の信用やブランドに関わる問題だからです。
現場だけで判断してしまうと、万が一事故や市場問題が発生した際に、意思決定の経緯や責任の所在が曖昧になってしまいます。
だからこそ、重大な品質問題ほど、経営層を含めてリスクを共有し、組織として判断する仕組みが必要です。
品質保証とは、単に不良を見つける仕事ではありません。
品質保証とは、品質リスクを正しく評価し、そのリスクに応じた判断を行う仕事です。
そして、その判断を支えるのは、経験や勘だけではありません。
過去の事例、技術的な根拠、そして積み重ねてきたデータです。
だからこそ、判断には必ず「閾値」があります。
その閾値を正しく見極め、必要なときには迷わずエスカレーションすること。
それが、品質保証に携わる者に求められる重要な役割だと私は考えています。

